24505736.jpg 怒濤の出張を終えて、先週末の土曜日は久々のオフ。昼過ぎに近所の美味しいと評判のとんかつやへ出掛けた。
鹿児島で 豚カツが食べられなかったのが余程心残りだったのか私ってば。薩摩の仇を江戸で討つ...って感じでしょうか (^^;)

上ロースかつ定食は殊の外美味しく、満腹で帰宅。ぼぉ〜っとテレビをザッピングしていたら。(あ、していたら。)
なんと嬉しい ジャズコンサートライブの放送に遭遇した。

『秋吉敏子デビュー60周年コンサート 〜今、21世紀の子どもたちへ伝えたいこと〜(再)』NHK衛星第二 午後5:30〜6:45だった。

 2006年10月、アメリカジャズ界の最高栄誉「全米芸術基金ジャズマスター賞」を日本人として初めて受賞した 77歳のジャズピアニスト・秋吉敏子さん。
彼女が 2006年12月4日、東京サントリーホールで行った 活動60周年記念コンサートの中継録画が今年1月にオンエアされたのだが、その再放送であった。

あぁ...観られて良かった。。。感動でうち震えるような一期一会のジャズ。

 私が観始めたのは途中からで、彼女の夫でテナー奏者のルー・タバキンがフルートで、日本の鼓、小鼓の奏者とのコラボレーションを 丁々発止で展開中だった。
生粋のアメリカ人ながら、ルー・タバキンのフルートは和楽器の響き。篠笛や尺八のように、いやそれ以上に和の心、日本の情緒を表現していく。鼓奏者達も まるでジャズしていて感嘆。
秋吉敏子の創り出した曲想にこそ、しっかりと日本を東洋を感じさせる世界が反映されているからだろうか。

その後も、このコンサートのために特別に編成したビッグバンドである秋吉敏子ジャズオーケストラの演奏が続いていく。
これからはピアニストとしての活動に専念したいと30年間続けてきたオーケストラを2003年解散したのだが、今回のコンサートのために、オリジナルメンバーが再集結したのだ。
2001年7月29日、NHK 505スタジオに迎え、そこで聴いた感動が蘇ってくる。

だが、特筆すべきは今回 そのどれもが他ジャンルとの競演であるということ。

鼓、小鼓と 朗読と 和太鼓と 歌と。
音楽で、その姿で 表現しようとしている圧倒的隠しテーマは、「平和・共存」なのだと、そのコラボレーションによって徐々に気付かされていく。


女優・中井貴惠の英語詩の朗読とのコラボレーションは、2004年秋にニューヨークを旅した時、リンカーン・アット・ジャズセンターのローズシアターで聴いた、ジャズとポエム・リーディングとの融合 ”Let Freedum Swing" を思い出した。
当時、私の英語力ではポエトリーの半分しか意味はわからなかったけれど、映画俳優のモーガン・フリーマンら朗読者が必ず「...フリーダム!」の言葉で締めるリーディングは圧倒的な世界を持ち、ビッグバンドジャズとの競演は とても力強く響いてきたものだったから。

圧巻は 和太鼓の林栄哲との競演。

打楽器をフィーチャーする曲「ドラム・コンファレンス」でオーケストラ演奏の終盤、栄哲の大太鼓とルー・タバキンのテナーとの二人だけのバトルは、戦いというより 友好の固い絆が ステージ上に赤く強く はっきりと見えた気がした。
お互いの音を聴き、理解しあい、認め合い、許し合い、求め合い、信じ合い、応え合う。そうして、さらなる高みに登り詰めていく。

国も世界も こうであったなら。

きっと秋吉さんは それを表現したかったのじゃないのか。
二人のアツイ熱い競演を、ピアノにもたれかかり 時に笑いながら幸せそうに見つめている秋吉さんの表情のなんてステキだったこと。

そうなんだ。
このコンサートは 秋吉さんのジャズ人生60年のひとつの集大成であるとともに、一貫した平和・反戦というメッセージを送り続けているのだ。
テレビ画面でライブを観て聴いていて 自然に涙が出てきたのは、いつの時以来だろうか。。。

「今、21世紀の子どもたちへ伝えたいこと」というサブタイトルの意味を深く思い知る。


アンコールに届けてくれたのは愛娘・Monday満ちるとの共演。
曲は「HOPE 希望」。
2001年、広島の寺の住職からの依頼で原爆をテーマに世界平和を願ってつくった組曲「ヒロシマ〜そして終焉から」の最終パートである。
原爆を悲惨なものとして受け止めていたうちは書けなかったという秋吉さんは、ある日、写真集の一枚に写っっていた少女の清らかな瞳を見たとき思ったそうだ。未来への希望の曲としてなら「書ける」と。
2001年8月6日広島で演奏し、ニューヨークに戻ってたった1ヵ月後の9月11日。
同時多発テロを目の当たりにした秋吉さんは、世界から戦争がなくなるまで この曲を演奏しつづけようと決意した。
その作品に 谷川俊太郎が詞をのせた。


希望       谷川俊太郎

希望 それは こころ
あふれやまぬ ひとのいのち
よみがえる草木 朝日とともに
明日へと こころは かがやいて

忘れられぬ 日々も
子どもたちの 未来のため
こころよ飛べ 夢見る世界へ
希望  あふれて


Monday満ちるの歌う詩をメロディーを聴いているうちに、岡本太郎の「明日の神話」が頭に浮かんできた。
彼も 原爆の悲惨さから生まれいずる明らかな希望を 巨大壁画のそこかしこに描いていた。

音楽は 芸術は 人の憎しみをきっと溶かしていくと 信じてしまう。
そんな思いを 
      秋吉さん。 ありがとう。


強い夢は 叶う。。。きっと 叶う。



放送曲目:
「ザ・ビレッジ」
「チェイシング・アフター・ラブ」
「ロング・イエロー・ロード」
「孤軍」
「チルドレン・オブ・ザ・ユニバース」
「レット・フリーダム・スイング」
「ドラム・コンファレンス」
「ホープ 希望」

(写真は、2002年10月20日、NHK session505に秋吉敏子ピアノトリオとしてご出演くださったときの秋吉さんとのツーショット。この時のインタビューがドキドキの展開だったけれど、すごく深い内容になり感動したものでした。)