a07db389.jpg『まぼろしの邪馬台国』 観てきました。
昭和40年代、同名の著書を著し全国に邪馬台国ブームを起こした盲目の文学者・宮崎康平さんと、その研究に協力した妻・和子さん。
さだまさしさんの「関白宣言」のモデルになったと言われる実在の夫妻を、竹中直人さんと吉永小百合さんが演じている映画です。

いきなり、「これは実在の人物をモデルにした フィクションです」と大きな文字の但し書きで始まります。
故・宮崎康平さんの奥様・和子さんは今もご存命とあって、作られたエピソードやシチュエーションを歪めたシーンも多々あったようですが、ご本人の和子さんが映画が面白くなるならと快く了承したとパンフレットにありました。

そうです。
吉永小百合さん演じる 和子さんの愛。
献身愛とか 滅私とかいうことじゃなく、
宮崎康平さんの 破天荒な生き方やらロマンを求める姿に
パートナーとして妻として、ほんっとワクワクしていたんだろな。ということ。
「この人といたら、退屈しないわぁ」って、
面白がって毎日を過ごしていらっしゃったのかなって。
そう思わせてくれる相手って やっぱり最高です。
そりゃそりゃ、幸せです。

史実の研究のため旅に出た康平を演じる竹中直人さんが
「もう、邪馬台国がどこになんて じつはどうでも良くて、貴女とこうして旅していることが嬉しい」
みたいなことを口にするんですが、冥利に尽きますよね、そんなこと言われたい。


昨日テレビで観た「世界不思議発見」では、邪馬台国は近畿に所在したと決めつけて制作している構成でした。
宮崎康平さんのとられた邪馬台国=九州説は いまや少数派となっているのでしょうか。
未だ、正確な真実が見いだせない古代の歴史だからこそ、自由に思いを馳せる夢が浪漫があるのです。

歴史好きのハートをくすぐる由縁ですねぇ。

この映画。
九州の自然の美しさを ちゃんと映像で表現してました。
堤 幸彦監督。がんばった。

特に。
熊本の宇土半島から島原を眺めるシーン。
夕陽赤く 無数の三日月形の干潟に オレンジが充満する夕景は圧巻でした。
田ごとの月 ならぬ 干潟ごとの太陽です。
パンフレットに吉永小百合さんが、
「あまりに綺麗すぎて、CGって思われるのでは?ってちょっと心配しています」
と おっしゃっているコメントが載っていましたが、
ほんとにそう。
息を呑む光景でした。

要所要所の切り取られる風景が 構図が美しかった。
島原の武家屋敷、雲仙岳。SLの走る田園風景。暴風雨の山中でさえも。

宮崎康平さんが作詞・作曲された「島原の子守歌」は、重要なファクターとして 何度も登場します。


清廉なエロス がありました。
盲目の康平が 和子の頬を唇を指でなぞり、顔を近づけるシーン。
オブラートにくるんだエッチさが見え隠れ。いやんっ!

今年は「母べえ」も観たのですが、そこでは偉大なる 否・演技派(!)に感じられた吉永さんが、この「まぼろしの〜」では、とても自然な演技、腑に落ちる演技で良かった。
お茶目な感じも表現されていました。
もっとも、その常軌を逸脱した若さと美しさで そこに居るだけで そこに咲いているだけで良い存在ではあるのですが。
結婚前のアナウンサー時代のウエスト絞ったワンピース姿なんて、お人形さんのようでした。
花柄があしらわれた 白いモヘアのニットセーターを着て康平のための立体地図製作をしている小百合さんなんて もう、ギュッと抱きしめたい感じ。
いいなぁ。
ハイビジョンと合成を駆使した 邪馬台国の卑弥呼を演じたシーンも美しかったです。

脇を固めた俳優陣は みなそれなりに良い演技をしてました。
特に 柳原可奈子、余 貴美子さん、平田 満さん、康平さん&和子さんの実のお孫さんの宮崎香蓮ちゃん。

生前の宮崎康平さんをよく知るさだまさしさんは、パンフレットで言葉を贈っています。
気難しくて優しくて ロマンチストで情熱家。
映画での竹中さん演じる康平は ほんとそう。
お会いしてみたかった 実在の宮崎康平さん。
どんな浪漫を熱くあつく語っていたのでしょう。

「関白宣言」のヒントをいただいたということに映画を観た人たちは納得したことでしょう。

「まほろば」というさださんの歌を宮崎さんが褒めてくれたとパンフレットの記述にあり。それで思い出した この歌の歌詩の男女の性質の違い。

「遠い明日しか見えない僕と
足下のぬかるみを気に病む君と
結ぶ手と手のうつろさに 黙り黙った分かれ道」

私を含め、女は えてして足下にばかり眼が行きがちですが、この映画で描かれる和子さんは、遠い明日を康平と共に見据えています。
顔を斜め45度に上げて、瞳を輝かせています。


感極まり、涙してしまうシーンありました。
良い映画でした。

じわじわ 人の心に届いていく そんな作品です。

よかったら。ぜひ どうぞ。

まぼろしの邪馬台国