Panf_Totobag70年代。

音楽にとって 本物の時代だった と。

前夜、聴いた上田正樹さんのライブ、
オープニングで奇しくも上田さんが
口にした言葉。



1970年代。
まだ音楽が 今のようにコマーシャリズムに汚染される前、そこには本物の音楽があったという。

それを 次の日に実感 体感できるだなんて。

2010年4月17日 土曜日。

チケットぴあで コンサートチケットを購入、ファミマでゲットして、一路 みなとみらいへ向かった。

パシフィコ横浜で行われたキャロル・キング&ジェイムス・テイラーのコンサート
「Carole King & James Taylor  Troubadour Reunion 2010」を観にいったのだ。

来日アーティストのコンサートは 高いね。
でも、きっと それだけの価値は ある。

2,3日前に急に思い立って、ネットで購入したから、S席といっても、けっこう後ろのほう。
でも、PA席の後方 真ん中あたりで 音も照明の見え具合も実に良い。
と思ったら、目の前の席に とっても座高が高い上に、髪の毛を立てている髪型の男性が着席して、ショック。
こちとら、背骨骨折で、座高も縮んでいるものだから、摩天楼のように壁が立ちはだかっているようで、見えない。
いきおい、右に左に 大きく身体を傾けつつステージを見守ることになるが、そんなストレスは ステージが始まってすぐに どこかに飛んでいった。


キャロル・キングが聴きたい一心で向かったのだが、考えたら、
ジェイムス・テイラーといえば、私が高校の頃 好きだった曲「虚ろな愛」のカーリー・サイモンの元・夫、
あの「You've Got A Friend」は ジェイムス・テイラーがカバーしてヒットさせた曲だもんね。
Chageさんのリコメンミュージックのコーナーでも彼を取り上げたっけなぁ。

二人が初めて一緒に演奏したのは 1970年。まさに70年代。
そのときから 40年を経た今日に至るまで、二人は 音楽的な繋がりと友情は 時と場所を超越して 続いているという。
一番 気心知れた同士のジョイントコンサート。

仲の良さは、二人 手に手を取って登場の時から あったかビームで伝わってくる。

まず、歌い出したのはジェイムス。
アコースティックギターを奏でながら ひとつひとつ とても丁寧に送り出す。
艶やかな歌声。ジェントリーな物腰。
有機野菜のような 居心地の良い声。

そして二曲目は、キャロル・キングの「So Far Away」。
大好きな曲。

二人の大物のジョイントコンサートと聞いて、
どちらかのコーナーが続いて、後半に一緒にセッション。
そんなライブを想像していたんだけど、とんでもない。
ほとんど交互にボーカルをとる。
そして、ジェイムスが歌っている時には、キャロルはピアノを弾き、
あるいは ピアノをキーボードの人に任せて、コーラス隊に交じってハーモニーをつける時も。
ほんとに しっくりくる肌触りの良いカシミアのインナーを着ているような 心地よさなんだ。

ジェイムスの時は 古き良きアメリカのカントリーやフォークを感じさせてくれ、また、ハーモニーが美しい。

キャロルの声は ちょっとかすれてハスキーで、でも伸びやかで。
少し音がフラットして感じるのも 彼女独特の歌唱。

考えたら、御年、ジェイムスは62歳、キャロルは68歳!
ぜんぜん そんなふうに感じられない。
その年にしては 若い。なんてぇもんじゃないのよ。青春してる。そのまんま。
歌声も 佇まいも パフォーマンスも。20代の女の子と男の子のまま。
(ジェイムスの髪型は それなりの経年変化を見せていたけど、パンフレットに載ってた若き日の彼は なかなかにハンサムボーイ♪)

そう、時々 日本語で「ミナサマ ウツクシイデスぅ」とか、いっぱい日本語で語りかけてくれて、そんなところも、ほんっとにお客様を楽しませ上手。

さらに、今回のコンサートが 音楽ファン垂涎の対象になっているのは、バックを固めるメンバーが初期のメンバーのリーランド・スクラー(b)、ラス・カンケル(ds)、ダニー・コーチマー(g)。
まさに「ベテラン」「職人」「匠」のわざです。

リー・スクラーなんて サンタクロースか亀千人のような白い長い髭を胸の下まで垂らしていて人間界を越えた世界からやってきたよう。

バックコーラスの男女のハーモニーやキーボードも入って総勢9名の作り出すバンドサウンドは エメラルドからターコイズを基調として放射状に輝き続ける照明とあいまって、実に有機的に 心地よく身体の中に染み込んでいく。

ごくごくと美味しい水を飲み干すように、彼らの泉を 掬っては味わっていく。

そして、第一部の最後は「A Natural Woman」
オチジュンが ライブでよく歌っていた曲だ。
数日前の大阪メモリアルコンサートを思い出して、涙ぐみそうになるけれど、キャロルがタクトを振るような仕草で客席を促し、サビ部分
「 ♪’Cause You Make Me Feel,  You Make Me Feel, 
You Make Me Feel  Like A Natural Woman...♪ 」
右隣りは 拍手もあまりせず、わりとクールに鑑賞している男子だったが、左隣りは キャロルやジェイムスの一挙手一投足、小さな言葉やジェスチャーにも とても敏感に反応し、大きな声で笑う 好感度大の青年。彼と おっきな声で歌ってしまってました。

あぁ、、、いろんなことが 走馬燈のように(ってよく比喩するけど、実際の走馬燈はあまり観たことが無い。ってそんなことはどうでも)頭の中を巡っていく。

この一週間の 澱のように溜まった人間関係のあれやこれや。
嫌だったこと 嬉しかったこと 愉しかったこと 心揺らしたこと 
一緒に涙したこと 笑ったこと 怒ったこと 
うつむいたこと 見上げたこと

そのどれもこれも

いいんだよ あなたはそのままで。
って 受け止めてくれる。
自然のままで。心を 強いることはないのだ。自然な私にととのえてくれて ありがとう。

やっぱり 大好きだ。ありがとう。心で呟いたところで 休憩。

およそ20分。座席を立って 廊下へ出ると、ガラス張りのそこは 横浜ベイブリッジを望む 素敵なロケーション。
ウツクシイ吊り橋を眺めながら キャロルも この景色を見て、「ウツクシイデス」と言ってるかなと考えてみたり。

そして 始まった第二部。
cahins や Jazzmanや I Feel The Earth Moveや キャロルの「 in Concert 」で聞き慣れている ノリノリの曲がずらっと続き、気分もどんどんヒートアップ。
かと思うと、「とてもフルイ曲をウタイマス」と言って歌い出したのは、60年代、当時の夫のジェリー・ゴフィンとのソングライター・コンビで世に送り出した「Will You Love Me Tomorrow?」ちょっと はにかんだ感じで歌うキャロルが とてもキュート♪
ジェイムスの曲は 正直言って あまり知らなかったのだけれど、「Fire And Rain」はじめ、どれも とても爽やかな5月の風が吹いてくるような端正で透明な世界。いいなぁ。アルバム買って聴こうと。

そして。
本編の最後は やっぱりこれ。
「You've Got A Friend」
まずは、ジェイムスが一番を歌い出し、二番はキャロルが。
まさに それぞれ自分の「You've Got A Friend」になってる。
そして ベターハーフを 見つけたような絶妙の二人のハーモニー。
まさに「君は ともだち」。

よかった。
ここに来て よかった。

友だちに ありがとうを いっぱい言いたい気持ち。

そして スタンディング・オベーションの中、迎えてのアンコールは
二曲歌って、終わりかな...と思ったら、前のほうの席の観客が なにか大きな画用紙に書いて渡したようで(私の席からは 何が書かれていたのか見えなかった)それを手にして とても嬉しい笑顔の二人。
ぴったりと寄り添って、ジェイムスのギター一本で、デュエットで聴かせてくれた。
終わったときには ハグそして互いのほっぺにキス。
なんて素敵。

心から敬愛しあっている二人。

二人。 いちばんウツクシイ二人。

幸せなオーラが 金粉を振りまくように パシフィコ横浜を埋め尽くした満員のお客さん達に 広がっていく。

そして ラスト。
「ロコモーション」だぁ〜♪
勿論、総立ち クラップハンズ、左右に踊りながら 盛り上がる盛り上がる。
コーラスの がたいの良いお兄ちゃんも ソロをとったりして とにかくみんなで「♪Come on baby do the loco-motion♪」そしてコール&レスポンス。

ハッピー気分をいっぱいいっぱい残して 2時間45分のコンサートは終わったのでした。

なんだか この幸せを形に残したくて 買う予定の無かったコンサートパンフとトートバッグを購入。
しばらく余韻に浸りながら 彼らの音楽の本質を 反芻する日が続くでしょう。



1970年代。
まだ音楽が 今のようにコマーシャリズムに汚染される前、そこには本物の音楽があった。

本物は 残る。
そして 今また 本物をちゃんと 噛みしめる時代なんだと思う。

キャロル ジェイムス ありがとう。

KaikouKinenkan
幸せの余韻を噛みしめつつ、
ハマの友人、日野美歌嬢を呼び出し、

日本酒と肴の旨い店で舌鼓。
横浜開港記念館の裏手を ずんずん行くとある 
その店は
なんと日本酒も焼酎も全300種類以上。
すごい。

鮭の白子を味噌漬けにして燻製したものを
鹿児島の溶岩の上で炙って食す、というつまみが絶品。

自然に 酔っぱらっていく 女二人。

ナチュラルよっぱーウイメン。