さだまさしさん。

中学生の頃から、その詩の世界、歌の世界に憧れつづけてきた尊敬するアーティスト。
美しいメロディー、深い深い文学的な詩、ギターとバイオリンの素晴らしい演奏
コンサートでは歌よりもそちらを楽しみにする人も多いというトークの深さ、面白さ♪
すべてが好きだった。

だから。
ヒルサイド・アヴェニューで初めてゲストにお迎えして以来、
番組で、コンサートで、その打ち上げなどでご一緒する栄に浴する大人になった自分を、 中高生時代の自分は、ものすごく羨望し嫉妬しているだろうなぁと思ってしまう。

そんな憧れの存在、さださんの 最大のステキポイントは 
日本語を たいせつにたいせつに紡いでくれること。
その天才的才を活かして、歌という表現世界にとどまらず、小説家としての顔を持つようになって久しい。

はかぼんさん
「精霊流し」「解夏」「眉山」など、
心に楔を打つような感動を与えてくれる小説を
次々と発表してきた さださんの最新作が、
この本 「はかぼんさん」

言っておくが、バカボンさん ではない。




”吟遊詩人”さだまさしが虚実皮膜の筆で描いたゾクリと面白く、ジワリと沁みる初の幻想小説!
と帯の裏にも銘打っているだけあって。 
日本のあちこちの不思議を、さださんを思いっきり投影させた「私」が旅をしながら描いていく全6編の奇譚集。 
あまりの面白さに、一気に読み進み、あっという間に読了。
何度も肌が粟立って、何度も胸がどきどきした。

良え子にしとかんと、はかぼんさんが来るえ....京都では、言う事を聞かぬ子どもに こういう言葉が言われてきたという。この はかぼんさん という言葉に隠された謎の儀式を追う表題作の「はかぼんさん」

石川県能登半島の海でおこなわれる神寄せ神事をとりあげる「夜神、または阿神吽神」

長野県安曇地方の鬼が現れる夜を描く「鬼の宿」

胸が熱くなる淡い恋にせつない思いが募るのは 青森県弘前市が舞台の「人魚の恋」

四国霊場のお遍路さんにまつわる「同行三人」

そして、最後には さださんの故郷長崎県長崎市が舞台の「崎陽神龍石」 

どれもこれも。
実話として読んでしまいそうになるが、まるで本当のようなファンタジーなのだ。
ゾワッと背筋が寒くなったあと、やがて人の性の哀しさ、やさしさ、つよさ、まずしさ、ゆたかさ、様々な魅力が滲みてきて。
胸の真ん中、じんじんさせながら読み進んでいく。

民族学的な見地から この国を掘っていくという点で
まさに現代の柳田国男「遠野物語」。

日本っていいなぁ。
日本という国が好きになる。
この国の奥深さを感じる。
やおよろずの神々。そう、全てに神が宿る国に、私たちは住んでいるのだと。

連日の中国での反戦デモが嵩じての過激なテロリズム、
さらに北朝鮮、韓国との軋轢を伝えるニュースに
日本という国はいったいどこに行こうとしているのか
茫洋茫洋 前途茫洋、憂国の思いやまずに居る毎日。

でも。

この小説を読むと。
まごうことなく「日本」という国に生まれ育ってきたことに圧倒的な誇りを感じるのだ。

パール・バックの「つなみ」、小泉八雲の一連の怪談、
徳島の眉山の頂上で観たモラエス館のポルトガル人外交官モラエスが書いた「おヨネとコハル」
など、日本に来た外国人が 畏敬の念を持って描いた日本人の美しさの描写も思い出す。

羊羹の虎屋が龍屋、クッキーの銀座ウエストが赤坂イイストと描かれているので(笑)
明らかなモデルが存在しつつのフィクションなのだなと。(*^_^*)
津軽編で登場する テレビ局の人間、伊那嘉門(田舎モン)は、伊奈かっぺいさんのことよね。。と、実在の人を思い浮かべるのがやがて楽しくなる。

この「はかぼんさん」に収められた6編は、小説新潮に、平成23年の5月号から平成24年の3月号まで、隔月でずっと発表されてきたものだ。
9/13の支援LIVEのおり、舞台袖でさださん、「途中から大変で大変で、何度も、もう続かないかと思ったんだよ」とおっしゃっていたけれど。
そんな産みの苦しみを微塵も感じさせない筆致に、ひたすら感嘆する。

そして さださんが 日本という国をとても愛していることが ひしひしと伝わってくる。



考えたら、小説に書かれた全ての場所を、私は歩いたことがある。
ヒルサイドアヴェニューや、旅番組YAJIKITA on the road を担当していたおかげだ。
なんて幸せなことなのだろう。

日本は美しい国だ。

今こそ 誇りを持つために。
この本、読んでほしいな。

はかぼんさん表紙はかぼんさん: 空蝉風土記