古波津ポスター


本日 夕刻 映画を鑑賞してきました。

古波津 陽監督作品『1/10 Fukushimaをきいてみる 2013年版』です。

昨日と今日、新宿のサンモールスタジオで無料上映されており、その最後の回を鑑賞することが出来ました。
行ってよかった。知ることができて本当によかった。
映画の終盤、私の涙腺は 感動でなのか、怒りや悲しみでなのか…なぜか壊れてしまったなぁ。

映画のタイトルにある「1/10」とは、1月10日…という意味ではなく、10分の1と読みます。
つまり、10年間撮り続けていくドキュメンタリー映画で、今回は その第一章という感じ。

まずは、ドキュメンタリーの進行役である福島県田村市船引町出身の女優・佐藤みゆきさんが 自身を語るところから始まります。
その後、葉たばこ農家に従事しているご自身の母親、父親、そして最近 赤ちゃんを福島の地で産んだばかりの知人など、近しい人から話を聴いていき、それに対しての率直な思いも語っていくのね。
みゆきさんは眼差しが涼しくて、非常に表情が美しいかた。
自然体で接し、エキサイトもせず、必要以上に悲しみもせず、まさに凛として そこに居続ける 彼女の 臨み方が 気高く美しい。私ならこうはいかないだろうなぁ…

雪に埋もれた畑を眼前に眺めながら、農業を続けていけるのか逡巡する女性、それは、みゆきさんの実母なのだけれど。
娘にも見せたことのない哀しい瞳を、ふとカメラの前に垣間見せているお母様。
それを感じてしまった娘・みゆきさんの戸惑いが とてもリアル。

こうして春夏秋冬 それぞれの季節に 福島の被災地で 撮影がおこなわれ、そこに暮らす人々の話を 聴いていきます。
テレビやラジオでは知り得なかった、そこで生活の営みを続ける人々が実際に淡々と語ることの なんと生々しく、なんと冷静で、なんと哀しいことか。
一方で、なんと力強いことか。

なかでも。

線量計を操りながら、放射線量の高いスポットを示しつつ、福島県民が今、どう震災や原発と向き合わなければならないかを真摯に語っていた福島市 常圓寺 住職の阿部光裕さんの言葉が とても 印象的でした。
「ポジティブな あきらめ」。
福島県の土の線量を全くゼロにすることは出来ない。
だったら、どう除染していくのか、どう未来を生きる子ども達に受け渡していくのか。頭にタオルを巻き、さも当たり前といった風情で除染を続ける阿部さんの強い眼光に、心 打たれ。

また、自身で車を運転しながら、警戒区域でゴーストタウンとなっている浪江町を案内していくラジオ福島アナウンサーの大和田 新さん。
言語明快な中に、強い 福島への愛情と、この福島の現状を常に発信していくという激しい意志が感じられ。

それから、たくさんの立場の人々の話が展開していきます。

津波が来た時、園長先生の機転で園児全員を屋上に避難させ、助かったという 保育園 園児のお母さんたちの言葉。
避難所で医療活動を率先しておこない、今も被災地にとどまっている医師の言葉。
相馬市市長の言葉。
震災や災害に備える備蓄倉庫を案内してくれる市役所職員。

どの言葉も 書き留めて心に留めておきたいものばかり。

そして、最後の届けられたシンガーソングライターの自作の歌。
被災地を巡り、住民の声を束ねてやっと書いたという歌詞と 美しいメロディーが 心に降り積もっていきます。

上映の前後に 
古波津監督、女優・佐藤みゆきさん、カメラマン・柏崎佑介さん(今回は、撮影部、録音部、トランポ部(ロケ車のドライバー)など1人4役をこなした活躍ぶり)という3名によるトークショーも展開。

古波津 陽監督
http://www.no-work.com/kohatsu/kohatsu.html
は、今をときめく片岡愛之助さんを起用した初監督作品「築城せよ」など常にチャレンジングな映画を作り続ける映画監督ですが、最近では『JUDGE/ジャッジ』
http://judge-seyo.com/
が超 話題となりました。
それに、御縁あって、「みやぎびっきの会」の震災復興支援ソング
「虹を架けよう」の宮城バージョン
http://www.youtube.com/watch?v=gWIszAw_CbU
と福島バージョン
http://www.youtube.com/watch?v=phJt9_ymv5Y
のPVを作ってくださったのね。
それぞれのPVフィルムに映し出される人々の表情をとっても優しく切り取って撮っていて、本当に愛ある監督だなぁと つくづく思っていましたが、今回の作品で また新たに 古波津監督の 被災地にずっと長いスパンで対峙していこうという青い炎のような意志を 強く感じました。

新年1月18日には岡山での上映会が決まっているとおっしゃっていましたが、
ぜひ、全国の中高生・大学生、若い人たちに観てほしい。
感じてほしい。
福島のリアルを。そこに暮らす人々の思いを。

そして、この 静かにして圧倒的なパワーを持つ記録映画は、スタートを切ったばかり。
有形無形に支援、応援し続けていくのも、被災地を忘れない。ってことに繋がるよね。
 

 
古波津監督と
上映
終了後 古波津監督と。