本
2008年06月24日
つくせども つくせども 〜 自虐の詩
「漫画」。というものに対して、どうも私は今まで偏見を持っていたなぁ...。と、今回 またつくづくと思ったの。業田良家の描いた「自虐の詩」を 初めて読んだ。
1985年から90年に 週刊宝石に連載されていた4コマ漫画が、上下巻の文庫本にまとめられたもの。イサオと幸代という内縁の夫婦関係にある 男女二人の物語なのだけれど。
いきなり、メシがまずいと言っては ガッシャン、ガッシャン。
イサオが ちゃぶ台をひっくり返すシーンの続出。
どんなに辛くとも じっと耐えて つくして つくして つくしまくる幸江。
子供の頃から貧乏で、友人に嫌われ、親に虐げられ、不幸の子と書いてフサチコと名付けたくなるような彼女の名前が幸江。
その皮肉。
その姿は けなげを越えて滑稽に映るからこそ、ギャグ漫画として体裁をなしていたんだと思う。
ところが、あり得ない〜とか、そこまでするなんてオバカねぇとか 笑いながら やがてじぃぃんと目頭が熱くなってくるの。
人として。男として女として。生きていくという上で。
避けて通れない 恥や不実や哀苦しみ悔しさ、どん底に突き落とされる深い哀しみ。
その絶望の淵から這い上がってくるのは、誰かに認めてほしい。知ってほしい。わかってほしい。そして 愛してほしい。その思いから。
どうしてこんなしょーもない男イサオと共に居るのか。
それは、下巻で解き明かされていく。
笑って じんとして ついに「生きる」ことの意味を知るんだな。
主人公の二人ばかりか 周辺の人々が 皆 なんだかいい。
特に 中学時代の唯一の友、熊本さんの存在が スゴイ。
男女の愛を描くところから始まったはずが 最後は。。。
痛いくらい 体の心の表面が ざわざわちくちくした。
実は昨年秋、阿部寛と中谷美紀の主演で映画にも なっていた。
観てなかった、失敗した。DVDになってるから、今夜にでも借りて観てみよう。
不幸せより 幸せになりたい。少しでもって願う心。
でも、この漫画は教えてくれる。
「幸や不幸は もういい
どちらにも 等しく価値がある
人生には あきらかに 意味がある」 って。
2008年05月21日
町で見つけたもこシリーズ第18弾〜絵本!
このところ、毎週連続して投稿を頂戴し、嬉しいかぎり♪あんがい、もこは ある&いるものですねぇ〜
今回は 「さやちゃんママ」さんからです。
「いつもモコマグ、楽しく読ませてもらっています。お母さんからの投稿は少ないのでしょうか?
うちの娘のお誕生日プレゼントにいただいた絵本が可愛いのでお知らせします。わだことみさんの書いた絵本、「ドキドキかいじゅうモコちゃん」です。ついにもこさんも怪獣ですね(笑)このモコちゃんは、とっても心配性でいつもドキドキしているのです。もこさんは心配性ですか?」
★(^^;)... 世界一おおざっぱなA型の小川、心配性とはおよそ対極。。。に思われがちですが、案外ダメなのよ。
アサイチの飛行機に乗るため、早起きしなきゃ...なんて時はドキドキして眠れません。結果。最近の富山入りは、いつも徹夜ですぅ(泣)今週も赤い目をしたドキドキかいじゅうが富山に出現しますので、どぞ よろしく!
2008年04月23日
小説にて ふるさと再考
私が よくやること。性癖といってもいいかも。仕事で関わる地について、まずその地を舞台にした小説を読んでみるのだ。
仙台は 私の故郷。
実家があるから年に数回行き来するのだが、足げしく仕事で通う地よりも疎遠になっていた。今回、FM仙台 だけで放送される番組が始まったことが、また新たな視点で故郷を眺めたいという動機付けとなった。
先週、秋田へ向かう飛行機と そこから仙台へ向かうバス、そして帰りの新幹線の車中で 2冊の小説を読み終えた。
伊坂幸太郎著の「重力ピエロ」と「アヒルと鴨のコインロッカー」である。
千葉の出身だが、東北大を卒業し仙台市に在住の作家、伊坂の小説の舞台は 仙台であることが多い。
この2冊も、仙台の街で起こる事件から話が展開していく。
ふぅ。 一気に 読んだ。
仙台ゆかりであることよりも、その表現に引き込まれたのだ。
「春が二階から落ちてきた。」
ユニークな書き出しで始まる『重力ピエロ』。
一気に のめり込む。
様々な比喩表現。軽妙なテンポ。古典小説の引用。DNAの話。
知的好奇心をおおいに刺激する。
連続放火事件、街の落書きのグラフィティアート、レイプ、遺伝子、異父兄弟、ストーカー... と重くなりそうな今様なモチーフが続くのに、展開はどこか暢気で明るく、なんだかスカッとする。
兄弟間や家族で交わされる会話が 魅力いっぱいなのだ。こんな父親、母親、家族の在り方が 理想だなと思わせる。
ここでの犯罪が、光市の母子殺人事件を暗喩しているようで、リアルと虚構の狭間を気持ちが行き来する。
小説のように 現実は動いていかない。
だからこそ。時々 こんな世界で心を鍛えたり遊ばせたりすることが大事なんだなと思う。
この、「重力ピエロ」は現在映画撮影中とか。仙台の友人がエキストラとして参加したと報告あり。
来年の公開が待ち遠しい。
「アヒルと鴨のコインロッカー」は 昨年映画化されている。
全国の本屋さんの店員が選んだ いっちばん!売りたい本、「2008年本屋大賞」にダントツ1位で、伊坂幸太郎さんの「ゴールデンスランバー」が選ばれた。
これも仙台が舞台となっている。
はまる人は はまると思うよ 伊坂ワールド
あなたも一度 ぜひ、どうぞ。
2008年04月08日
たそがれゆくときに

漫画を読まなくなって久しい。そうすると読んでみたくとも、どれから手にとっていいのか判らなくなる。
そんなある日。番組の合間に チャゲさんが言った。
「もこちゃん、黄昏流星群って知ってる?」
「えっ。。。?なんでしょう。知りません。」
「すごくいいんだよ。静かにじぃぃんと来るんだな。
読んでみる?」
「そりゃもう、喜んで。」
翌週、大きな紙袋に入れて、「とりあえず10冊ね。」
と貸してくれた コミック本。おぉぉぉ、こんなにたくさん。
それは、小学館発行の青年向け漫画雑誌『ビッグコミックオリジナル』に現在も連載されている弘兼憲史の劇画、『黄昏流星群』(たそがれ・りゅうせいぐん)だった。
第一巻。パラパラめくるといきなりベッドシーン。わぉ、大人の漫画ね♪でも。読み進むうちに どんどん引き込まれていく。最初の「不惑の星」が一番長くて9章。短ければ2章で完結の短編集。
せつない。ほんっとに切ない。
そこに描かれているのは、齢40代以上、50代、時には60代、70代の男女が主役の 恋や愛やドラマ人間模様。
年齢を重ねてからこその愉しみ、哀しみ、喜び、充実、真の愛の姿が オムニバスで さまざまに描かれている。
どの話も 主人公にどんどん感情移入してしまう。自分の事のように思いが込み上げてきて 胸がじんじんしてくるの。
中でも胸を打ったのは 第6巻「聖夜の星」。
クリスマスイブにリストラされて帰宅した40代の夫とTVキャスターとして人気の妻。二人の関係は冷え切っている。ふと窓の外を見下ろすと、公園のベンチにうつむく少年。聞けば、家出してきたという。招き入れ、にわか家族のようにクリスマスを祝う3人。そして その夜、奇跡が起こる。
他のリアルな話とは趣を異にしたこの回は メルヘン。
けど。泣いた。涙が溢れて あふれだして困った。
すでに29巻までコミック化され、週刊誌では今なお連載が続いている「黄昏流星群」。いくつかは映画化されたり、テレビドラマ、ラジオドラマ化されている事を知り、iTunesのオーディオブックを検索すると。ABC朝日放送において「流星倶楽部」の名でシリーズとなって購入聴取できるようになっていた。
試しに この「聖夜の星」の回をダウンロードしてみた。
俳優の今井雅之と 元局アナの魚住りえが好演してる。
原作の感動を 失っていなかった。
年齢にあらがう。
アンチエイジングという言葉は なにも美容でのみ使われる
言葉じゃない。人として 生きていく上においてこそ。
いくつになっても 心をときめかすことが 必要なんだよ。
『 Like Shooting Stars in the Twilight 』
たそがれゆく夕闇のなかでこそ ひときわ輝く流星のように。
人生のセカンドハーフ、後半戦において。恋しい人、大切に思う人、愛しい相手が 側にいてくれたり 出会ったり。
そんなでありたい。あってほしいね。
2008年03月17日
桜庭一樹 ” 私の男 ”
サクラ話題をもうひとつ。先頃直木賞を受賞して話題となっている女流作家・桜庭一樹(さくらば・かずき)さん。えっっ?女性?!
そうよね、女性と思えないペンネームだものね。
私は 直木賞作品「私の男」を、名前から男性作家だと思って読み始めた。途中で、どうしてこんなに女性目線なんだろう?って素朴な疑問がむくむくと。で、あら、女性なのね♪と やっと解った次第。
読んだのは ちょうど石巻のチャリティーコンサートで仙台へ向かう新幹線の中。展開の面白さに、意外さに、夢中になって読み進み、コンサートの楽屋で読了した。
そう、この小説は 全6章。章を追うごとに、どんどん過去にさかのぼっていく。一人称の語り部も主人公である腐野花、その結婚相手の男性、養父の淳悟、また花へと次々に変わっていく。
どうなっていくという帰結点がわかっていて、そこへ向かう様々な場面が 少しずつ解明されていく。その真相を知っていくごとに 胸を抉られるような戦慄を覚え、絶句するのだ。
花は、震災孤児だということ。
花と淳悟は 普通の養女と養父の関係ではないなということ。
二人に 何か犯罪の影が見え隠れすること。。。
そうして、花と淳悟の関係の狂おしさが 徐々に明かになり、複雑さと厚みを増していくのだ。
すごいな。
モチーフは おどろおどろしいものだけど、決して不快感を感じない。むしろ、読後は爽やかさすら ただよう。
選考委員の中で、浅田次郎氏が積極的に推していたのも興味深い。林真理子氏は、圧倒的に嫌っていたようだけれど。
作者の桜庭さん、直木賞受賞後さまざまなメディアで横顔を拝見するのだが、華奢な雰囲気で、決して 押しだしが強いタイプではない。
島根生まれの鳥取県米子育ち。最初はコンピューターゲームのノベライズ(小説化)やライトノベル作家から始まっているという経歴にも驚く。
これから、彼女の作品、もっと読んでみたいなと思った。
前後して芥川賞受賞作「乳と卵」もこちらは月刊文藝春秋で。
チャゲさんと番組の合間に、互いの最近読書したものを挙げあい、彼は「乳と卵」を、私は「私の男」を勧めたのだった。
川上未映子の書く文章は、すごく特殊な文体。句読点が無く、延々とセンテンスが長く続いていく様は 野坂昭如か、夭折の樋口一葉か。しかも関西弁。
ちょっと読むのに苦労するけれど、やがて言葉達がリズムを持って躍動を始め、その心地よさに 舌を巻いてしまう。
そして彼女の言語感覚の鋭さと楽しさ。登場する子供、緑子に日記の中の記述という形で、ある種、とても哲学的なことを語らせている。
ストーリーはともかく、文体に その表現に惚れ込んだ。
詩だな 歌だな 謳っているんだな と つくづく。
他人の文章は 密の味。本を読むのは 楽しい 愉しい。

