赤坂ACTシアター『志の輔らくご in ACT 『中村仲蔵』』
昨夜 鑑賞してまいりました。
いつにも増して、心震えました。感動のあまり、何度も落涙。
この語り、この表現、たった一人で どんな映画よりドラマチックに魅せて観せてしまう。
国の宝です。
今回 聴かせてくれた『中村仲蔵』は、昨年のアンコール再演。
江戸時代中期の実在の歌舞伎役者を描いた噺ですが、梨園とは無縁の門閥外から大看板となった中村仲蔵の立志伝のエピソードとして、『仮名手本忠臣蔵』五段目で、斧 定九郎を創意工夫して演じた様が語られます。
第一部で、この 今も昔も 最も演じられ続けている『仮名手本忠臣蔵』について、大序から11段目まで、こと細かに話してくれます。
忠臣蔵について 志の輔さんの視点から解説が加わったことで、より奥行きのある「中村仲蔵」を観ることができた、とお客さんから多くの反響があり、今回の再演になったというだけあって。
芝居を描いた浮世絵を用いながら、微に入り細を穿っての説明が ほんっっとに解りやすい。
11月12月歌舞伎での『仮名手本忠臣蔵』を あらためて観たくなっちゃいました♪
この時点で、すでに1時間半が経過。
15分の中入り後。
いよいよ、落語『中村仲蔵』の始まりです。
たった独りで この表現世界。
全ての話芸は 志の輔に 嫉妬する。。。
と言いたくなる。
そもそも落語というのが、すでに完成された芸術だとは思っているし、
数々の素晴らしい噺家さんは居るけれど。
やはり、志の輔さんの噺は立体的、そう、3D映画のように胸に飛び込んでくるのだな。
ストーリーは、その才能を四代目市川團十郎に認められ、名代にまで昇り詰めた中村仲蔵。彼が お披露目で演じる「仮名手本忠臣蔵」で あてがわれた役は、一番地味な五段目の パッとしない斧 定九郎 一役だけ。
どう演じたものかと逡巡する仲蔵の眼前に、燦然と登場する粋な素浪人。
その姿に 定九郎のインスピレーションを感じるシーンが圧巻。
「間」(ま)が スゴイんだよ。
何十秒でも黙ってる。
喋り手ってのは、この「間」が何よりもコワイものだけど、志の輔さんの噺は、「間」にこそ 一番の思いが入ってるんだ。
その 黙っている時間に、ACTシアターを埋め尽くした1,400人のお客さんが しん....として、高座の志の輔さんに その一点に全員の「気」が集中し、注がれていくんだね。
そのエネルギーによって、まさに飛龍の如く、志の輔さんの勢いが増し、
天駈けて行くのよ。
殺気を感じる すごみ。
こんな表現者 世界のどこを探しても そうそう居ない。
最後の舞台挨拶で、「昨夜は2時間50分、今夜は3時間を越えてしまいました」とおっしゃってましたが、そんな長い時間には感じない。
あっという間だった。
「あの、リニアモーターカーの話が余計だったかなぁ...(笑)」
いえいえ、時事ネタ満載の枕も含めて 全てが 面白く 趣き深く 愉しいのよ。
終演後、楽屋にご挨拶に行くと、ブラウンのバスローブに身を包んだ志の輔さんは、さっきまでのオーラは すっと消して、にこやかな笑顔。
「いつにも増して、感動しました。今までで一番泣いてしまったかも」
と申し上げると、さらに穏やかに ニコニコと頷いて。
もうすぐ気仙沼に公演に行かれるそうです。
「以前、びっきの会に声かけてもらったのに、ご一緒できずスミマセンでしたね」(注*仙台でおこなうドリームチェーンコンサートにゲスト出演いただけませんか?とお願いしたことがありましたが、その日は高座の予定が入っており、NGがだったことがあります)と、おっしゃってくださり。
お互い、できることを頑張っていきましょうね。と被災地への支援の思いに、ひとしきりエールを送り合い。
これからも 一生 志の輔さんは 話芸の 大いなるお手本であり、目標だわ と しみじみ噛み締めつつ 外に出れば、中秋の名月... の翌日の 十六夜の月。
煌々と照らされ しばし月光浴しつつ、赤坂サカス内の地中海料理屋へ
キュッとワインを あおるため 吸い込まれていったのでした。
演劇、演芸、コンサート情報など 織り込まれる種種雑多なフライヤーの中に、現在公開中の「レオナール・フジタ展」のを発見。
これ、とてもよかったよ。
10月14日まで 渋谷東急Bunkamuraザ・ミュージアムにて。
音声ガイドも聴いてみてね〜〜♪